緑内障と診断されたときに役立ちそうなウェブページ選(4): 前視野緑内障(preperimetric glaucoma:PPG)

緑内障と診断されたときに役立ちそうなウェブページ選(3)の続きです。

緑内障診療ガイドライン(第4版,2017年)は、「眼底検査において緑内障性視神経乳頭所見や網膜神経線維層欠損所見などの緑内障を示唆する異常がありながらも通常の自動静的視野検査で視野欠損を認めない状態」(p. 15. 太字は当ブログ管理人による)を前視野緑内障(preperimetric glaucoma:PPG)と称し、「原則的には無治療で慎重に経過観察する.しかしながら,高眼圧や,強度近視,緑内障家族歴など緑内障発症の危険因子を有している場合や,特殊あるいはより精密な視野検査や眼底三次元画像解析装置により異常が検出される場合には,必要最小限の治療を開始することを考慮する」(p. 35)としています。

PPGについて、現場の医師の先生方は、いろいろなご意見をお持ちのようです。本エントリーでは、いくつかのウェブページを紹介したいと思います。

※本エントリーの目的は、興味深いと当ブログ管理人が個人的に感じたウェブページを紹介することです。
医療・健康に関する情報は、すべての人に一様に当てはまるわけではない場合が多いです。医療の進歩などにより、本エントリーで紹介するウェブページの内容が古くなったり、ウェブページを書いた人の考え方が変わるかもしれません。
そのため、PPGその他の具体的な心配や相談などがある場合は、本エントリーは参考にとどめ、医療機関を受診すべきだと思います。

眼底に緑内障所見があっても視野検査で異常はない緑内障をどうするか? 治療するべきかどうか
http://blog.livedoor.jp/eyedoctor/archives/51969985.html

緑内障ガイドラインには「前視野緑内障は原則的には無治療で慎重に経過観察をする」と記載されています。[中略]特に近視の強い人に誤って異常としてしまう危険性があり、治療する必要のない人に一生涯、治療をすることになってしまい、その人の時間的経済的な損失は大きく、できるだけそのような不要な治療を避けなければなりません。しかし、前視野緑内障の方の中には、将来緑内障へと発展する可能性も高く、その見極めが重要になります。

上記ウェブページには以上のとおり説明されています。難しい問題だということは素人にも感じ取れます。

PPGに対しては、積極的に治療すべきという考えの先生も、慎重に経過を観察するという考えの先生も、両方いらっしゃるようです(※医療は進歩するので、将来、先生方の考えが変わる、ということもひょっとしたらあるかもしれません(当ブログ管理人の個人的予想))。

積極的に治療派

PPG(視野障害前緑内障)と言う新たな難題。
https://plaza.rakuten.co.jp/nishiwakiganka/diary/201607110000/

私達人間には目の視神経が元々120万本あります。そして大雑把に言うとこれが半分の60万本を切ると視野(見える範囲)が欠けてきて緑内障発症ということになります。

そして視神経に異常がありそれに一致する視野欠損があれば、どこからどう見ても立派な緑内障で当然に治療開始と言うことになる訳ですが、例えば今の視神経が残り70万本位で思い切り緑内障性の視神経変化を認めるけれども、視野検査では色々な検査法を駆使してチェックしてもまだ完全に正常であると言うことは臨床上非常に良くあります。

上のウェブページの著者の先生は、「私自身の考えを言えば、PPGは積極的に治療を開始すべきであると思います」と述べています。

同様の意見を持つ先生はいらっしゃるようです。

PPG
http://www.nishikawaclinic.com/blog/archives/1763.html

まだ緑内障と診断がつかないPPGで点眼を始めるかという話題がありましたが皆さんならどうされますか私なら点眼します。点眼で不可逆性変化を防ぐことができるなら安いものです。緑内障は白内障とは異なりに戻ることができない病気です。折角検査して緑内障の前段階を見つけたら無駄かもしれないが自分自身なら点眼を開始します。

第9回眼科治療を語る会 を聴いて・・・・ その2 (751)
https://takeganka.exblog.jp/22063225/

私は、診断に間違いなければ、視野異常が出現するまで待つほど気が長くありません。緑内障性変化が継続的に進行するとして、視野変化が出現する前には、神経節細胞が大量に失われる時期が長期間存在すると考えているからです。この期間を経過観察とするのは、あまりに勿体無い・・と考えます。

経過観察派

一方で、次のような意見の先生もいらっしゃいます(※正確には、次のウェブページではPPGという言葉は使われていないのですが、文脈上、同様の状態についての記述だと個人的に理解しました)。

緑内障? 視神経:OCTで評価
http://www.blog.sannoudaiganka.jp/?p=195

視野が全く欠けていない症例では、眼圧が重度に高い場合や、家族に緑内障で失明した人がいる場合などを除き、治療はせずに様子をみるようにしていますが、緑内障の予備軍として、1年後に必ず診察を。

「個々の患者さんとの相談で決める」

現時点では、ほかの病気などでなくPPGであると確定した場合、医師と患者が相談して決めたり、患者自身が選択する、となる場合が多いのでしょうか(当ブログ管理人の個人的推測)。次のように述べているウェブページがあります。

緑内障の病因は…?
http://www.satouganka.com/blog/2175/

PPGの治療開始に関しては個々の患者さんとの相談で決めるという古典的な治療指針となります。

上のウェブページの著者の先生は、同じブログ内で、「現時点でのPPGに関するエビデンスは非常に希薄であり、その定義や治療方針も定まっていません。眼圧正常な20代のPPG疑い症例に、生涯にわたり継続が必要な緑内障点眼を開始すべきかどうか…非常に難しい選択と言えるでしょう」(Preperimetric glaucoma)とも述べています。

緑内障と診断されたときに役立ちそうなウェブページ選(3)

緑内障と診断されたときに役立ちそうなウェブページ選(2)の続きです。

緑内障診療ガイドライン(第4版,2017年)は、「緑内障に対する眼圧下降治療には、薬物治療、レーザー治療、手術治療の選択肢がある」(p. 23. 太字は当ブログ管理人による)と述べています。本エントリーでは、点眼する際の注意点やSLTレーザーなどの治療法、緑内障患者が日常で気をつけることなどに関する、参考になりそうなウェブページを紹介します。

※本エントリーは、参考になりそうだと当ブログ管理人が個人的に感じたものを取り上げているのみです。すべての治療法を網羅してはいません。その点をご了承ください。

緑内障の点眼を正しくつけましょう その②
https://www.moriyaganka.com/blog/20337628.html/

上のウェブページでは、眼のどこをめがけて点眼すればよいかや、1回の点眼でたくさん滴下してしまわないコツなどについて図解で解説しています。

10590:緑内障点眼薬治療が奏功するための要件
https://www.kiyosawa.or.jp/glaucoma/50105.html

緑内障の点眼を正しくつけましょう その②と同様に、点眼の際の留意点について書いています。点眼間隔(5分以上)点眼後の閉瞼(1分)涙嚢部圧迫(1分)など、参考になります。

涙嚢部の圧迫と点眼後の閉瞼が悪いと血中濃度は3倍となり、副作用が出易くなる。涙嚢部圧迫により眼圧の低下は1.5mmHgが3.0mmHg低下に増強できる。

緑内障? 治療:SLTレーザー
http://www.blog.sannoudaiganka.jp/?p=285

上のウェブページではSLTレーザーという治療法を紹介しています。

SLTレーザーは、隅角に特殊なレーザー光線を照射することで、隅角からの房水の排出を増加させ、眼圧を下げる治療法です。

点眼薬の麻酔で施行可能で、痛みはほとんどない。治療時間は5~10分。当日から入浴や洗顔も可能。生活の制限なし。レーザーがよく効いた人は、点眼薬をつけなくてよくなったり、点眼薬の数を減らすことができる。効果が約1年間持続。効果が弱くなってきたときには何回でも再治療が可能。

と、とても良い治療のように思えます。

しかし問題点もあり、費用が高い、人によって効果に差がある(「良く効く人では、治療前35の眼圧が10とかにまで下がることがあります。逆に、全く効果が出ない人も20%くらいあります」)。

上のウェブページを書いた先生は、SLTレーザーを第一選択ではお勧めしておらず、一定の条件が当てはまる場合に勧めているようです。

緑内障34 日本初導入 CYCLO G6 レーザー①(新型毛様体凝固術)
http://www.blog.sannoudaiganka.jp/?p=622

眼圧30%以上の低下、または眼圧の正常化(20mmHg以下)を得られる可能性が70~80%で得られるという、とんでもない成績を誇る画期的な治療機器[中略]眼球勞などの重篤な合併症の発生が世界中で未だかつて1例もない

緑内障で悩む患者にとっては、希望となりそうな治療機器が紹介されています。上のウェブページ執筆時点(2017年12月)では、受け入れ可能な患者に条件があるようです。詳細はリンク先を。

緑内障患者が日常で気をつけること
https://www.moriyaganka.com/blog/21108885.html/

「外来では良く「日常で気をつけることはありませんか?」とよく聞かれます。」それに対する答えは・・・?

詳細はリンク先をやはりご覧ください。個人的には、最後の、「あまり神経質になりすぎない」という項目が参考になりました。この点にも関連すると思いますが、次のウェブページが、「緑内障気質」という言葉を紹介しています。

なお、緑内障の人は服用してはいけないと一般に言われている薬がありますが、以下の各URLによると、緑内障のタイプによって、飲んでよい場合とそうでない場合に分かれます。緑内障だともし診断された場合、飲んでダメな薬があるかどうか、眼科医に必ず確認したいところです。

緑内障の患者さんの性格は?緑内障気質とは?あるデーターから裏付けられたものは
http://blog.livedoor.jp/eyedoctor/archives/51413252.html

上のウェブページによれば、緑内障気質(「まじめで几帳面、神経質」)という言葉があるようです。

緑内障気質についての医学的根拠はありませんが、経験に基づいて眼科の医療関係者の間に緑内障気質という言葉が浸透していったものだと思います。
[中略]
しかし、沖縄で開催された第20回日本緑内障学会でそれを裏付けるような発表がありました。
[中略]
明るく前向きに生活するのも緑内障の進行を抑える一つの方法ではないでしょうか。もちろん緑内障の治療のことに注意していくことは重要ですが、病気のことばかりを考えず、時には気分転換も必要かもしれません。

緑内障に関するウェブページをこれまで複数見てきました。早期発見に努めることや、サボらずに定期的に受診をしていれば、過剰に恐れる必要はないという趣旨のことが書いてあるページが目立つ印象です。もし緑内障と診断されたとしても、できるだけ明るく前向きに生活していきたいところです。

緑内障と診断されたときに役立ちそうなウェブページ選(4)に続きます。

緑内障と診断されたときに役立ちそうなウェブページ選(2):視野検査

緑内障と診断されたときに役立ちそうなウェブページ選(1)の続きです。

緑内障と診断されたり、緑内障になるリスクが高いと言われた場合、視野検査を定期的に受けることになると思います。視野検査の結果にはいろいろな項目がありますが、以下のウェブページを読めば、それらの項目を理解しやすくなりそうです。

視野検査全般

緑内障? 静的視野検査:ハンフリー その1
http://www.blog.sannoudaiganka.jp/?p=196

上記は、視野検査やNFLD(「神経の薄い場所」)など、患者にとって基本的なことを学べるウェブページだと思います。

緑内障? 静的視野検査:ハンフリー その2
http://www.blog.sannoudaiganka.jp/?p=197

上記のウェブページも、視野欠損検査結果を捨てずに保管することの重要性MD値(「視野検査の重症度、病気の進行具合」)など、やはり、患者にとって参考になると思います。次のとおり、検査結果を経時的に比較することの重要性を述べてもいます。

1回前の検査結果と比べるだけだと、変化がないと思うような場合でも、1年前、2年前、3年前と、きちんと並べて比べてみると、実は徐々に悪化していることが分かる場合なども多々あります。

MD値

MD値を理解して、緑内障診療を理解する
https://www.moriyaganka.com/blog/16915674.html/

上記は、タイトルのとおり、視野検査の結果に表示されるMD値というものを患者が理解するのに有用なウェブページだと思います。

MD値というのは、同じ年齢の正常者と比較した視野の欠け具合を表したもので、緑内障の場合、緑内障が悪化しているかどうかの指標になります。一般的に、緑内障の場合、MD値が6以下で軽度、6-12で中程度、12以上で重度と判断します。この視野検査のMD値を数年分まとめて表にすると、緑内障の進行具合がわかります。

2つ上に挙げたウェブページ緑内障? 静的視野検査:ハンフリー その2では、MD値がマイナス15以上になると危険領域で、失明するかしないかなどの検討に入ると述べています。

当院の検査機器の紹介:HRTⅡ(その5)
https://takeganka.exblog.jp/5017643/

上のウェブページは、「緑内障というのは、どんなに治療をしても、徐々に進行するのを完全に止めることは困難」であり、「認めていい緑内障進行の程度」がポイントだと述べています。無治療だと60歳台で危険領域に入ってしまう緑内障眼を、治療して悪化速度を落とし、危険領域に入るのを80歳台や100歳近くにまで持っていく、という例を挙げています。

754 Q&A 緑内障の視野欠損が短期間で進行したとの質問とそのお答
https://www.kiyosawa.or.jp/uncategorized/36431.html

本エントリーでこれまで紹介してきたウェブページを読むと、視野検査を受けた際は、MD値に注目してみようと思えます。ところが、視野検査には誤差があるようです。上のウェブページは次のとおり述べています。

MD値は、患者さんがその測定に習熟していないと、マイナス3.0であったり、マイナス7.0に悪化したり、またマイナス1,5に改善したように測定されたりと、日によっても視野の変動は大きいので一喜一憂はされない方がよいです。測定を繰り返すうちに安定した値が出せるようになります。

VFI

MD値のほかに、VFIという指標もあります。これについては、以下の2つのウェブページが参考になります。

緑内障−最近の検査など その2
http://hirotsuji-eye.com/eye/e48

視野検査の結果のうちで、特に中心部分に重要性を持たせ、視野の異常度を表すことのできるVFI(単位は%)という指標が考えだされました。MD値が同じでも、中心部が保たれていればVFIが良い値になり、中心に異常があれば悪い値になります。より実質的な障害の程度を数字で表せる値であると言えます。このVFIの値を経時的に評価し、MD値を使っていた場合よりも確実に数年後の進行予測がたてられるようになりました。

視野検査について (420)
https://takeganka.exblog.jp/12545053/

今まで、視野検査を代表する数字はMDでしたが、これだと、中心視野の障害が強いものも、そうでないものも、MDが同じということがあり、現実の重症度を反映していないことが多かったのですが、このVFIは、その点を考慮し、中心視野に重みずけを行って、%表示してくれます。

緑内障と診断されたときに役立ちそうなウェブページ選(3)に続きます。

緑内障と診断されたときに役立ちそうなウェブページ選(1)

緑内障と診断されたり、緑内障になるリスクが高いので定期的な検査が必要と言われたときに、参考になりそうなウェブページを本エントリーでは紹介していきます。

緑内障は珍しい病気ではない。自分が緑内障だと気づいていない人が多数

日本緑内障学会多治見緑内障疫学調査」報告
http://www.ryokunaisho.jp/general/ekigaku/tajimi.html

40歳以上の住民4,000人を対象にした日本緑内障学会多治見緑内障疫学調査(通称:多治見スタディ)によると、緑内障の有病率は5%という結果が出ました。全体の平均は5%ですが、年代別にみると、40歳台、50歳台、60歳台…と、年齢が上がるにつれて有病率が増えています。緑内障は決して珍しい病気ではないようです。

Q&A よくある質問
http://www.katoglaucoma.com/q_a.html

上記日本緑内障学会多治見緑内障疫学調査」報告のように、緑内障は珍しい病気ではないようですが、自分が緑内障だと気づいて治療を受けている人は少数派のようです。上のウェブページには次の記述があります。なお、次の記述のほかにも、参考になりそうなQ&Aが上のウェブページには掲載されています。

日本では緑内障の人は400万人いると推測されていますが、実際に緑内障と診断されて治療を受けているのはそのごく一部で、緑内障患者さんの8割は自分が緑内障と気付かずに生活していると推定されています。

以下は当ブログ管理人の意見ですが、例えばメガネの処方箋を作ってもらうためにたまたま眼科を受診した際などに、初期の緑内障が発見されたような場合、自分はラッキーと考えて、サボらずに治療を受けるのが良いのではないでしょうか。

緑内障になると失明してしまう?と心配になるかもしれませんが,必ずしもそうではないようです。以下、いくつかのウェブページの記述を見てみたいと思います。

目の病気 緑内障
http://www.nichigan.or.jp/public/disease/ryokunai_ryokunai.jsp

「緑内障=失明」という概念は古くなりつつあります。現代医学を駆使しても失明から救えないきわめて難治性の緑内障が存在することも事実ですが、一般に、早期発見・早期治療によって失明という危険性を少しでも減らすことができる病気の一つであることは間違いありません。

3131 緑内障かもしれないと言う言葉にびっくりしないで。
https://www.kiyosawa.or.jp/uncategorized/38917.html

日本の緑内障患者の8割は自分でもその存在を知らないといわれており、たった2割の患者しか治療はされていないとされています。
[中略]
緑内障と言う診断が付くのが怖いからと言って「眼をそむけてしまう」のが一番危険です。
[中略]
失明は稀。正しい診療が始まれば恐れる必要はない。

ポイントは眼圧の下降

緑内障診療ガイドライン(第4版,2017年)には、「緑内障は、視神経と視野に特徴的変化を有し、通常、眼圧を十分に下降させることにより視神経障害を改善もしくは抑制しうる眼の機能的構造的異常を特徴とする疾患である」(p. 14)、「現在,緑内障に対するエビデンスに基づいた唯一確実な治療法は眼圧下降である」(p. 23. 太字はいずれも当ブログ管理人による)とあります。緑内障の治療では、眼圧を下げることがとにかく重要なようです。以下、眼圧について言及しているウェブページをいくつか紹介します。専門的な内容ですが、患者にとっても参考になると感じます。

トラバタンズ点眼液0.004%発売1周年記念講演会 (313)
https://takeganka.exblog.jp/9427209/

緑内障治療においては、眼圧を下げることが全てであり、どれくらい眼圧が下がっているのか判断するには、ベースライン眼圧が非常に重要で、これを知らなければ、どれくらい下がっているか分からないのです。このベースライン眼圧というのは、その患者さんにとって、一生基本になる眼圧です。この重要な眼圧を決める為に何回眼圧を測定するのか?[中略]3回が妥当だと結論。

緑内障? ベースライン眼圧と目標値眼圧
http://www.blog.sannoudaiganka.jp/?p=205

緑内障では眼圧は下げれば下げるほど病気が進行しにくくなります。[中略]ベースライン眼圧から20%眼圧を下げると、約半数の患者様で進行を止められ、30%下げると約80%の患者様で進行が止められるとされています。[中略]緑内障学会でも正式に推奨されていますが、特に正常眼圧緑内障では、ベースライン眼圧を決定するためには、別の日の同じ時刻に、最低3回の眼圧測定を行い、その平均値をベースライン眼圧として、その結果から目標眼圧を決定するように!となっています。

緑内障の治療
http://www.katoglaucoma.com/treat.html

点眼による治療での目標眼圧をどれぐらいに設定するかはケースバイケースで確実な基準といえるものはありません。しかし、おおまかな目安として開放隅角緑内障では初期で19mmHg未満、中期で16mmHg未満、後期で14mmHgというレベルが提唱されています。また、正常眼圧緑内障では治療前の眼圧の30%以上下降できれば、視野障害の阻止に有効であるとする報告があります。これらのレベルが治療のうえでの目標眼圧となりますが、目標眼圧までコントロールできても、視機能障害が進行するようであればさらに低い眼圧を目標眼圧として再設定しなければなりません。

緑内障と診断されたときに役立ちそうなウェブページ選(2)に続きます。

胃がん検査には胃カメラか?バリウムか?(3)

胃がん検査には胃カメラか?バリウムか?(2)の続きです。この投稿では、ABC検診や国立がん研究センター がん予防・検診研究センターによる「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン」(2014年度版)に関する興味深いウェブページを見ていきたいと思います。

ピロリ菌は胃癌の最大原因
http://naisikyou.com/iii/ca2.htm

上の記事では、慢性胃炎の治療(=ピロリ菌の除菌)により胃がんが予防できる、予防効果は感染の初期(胃の粘膜が萎縮する前)は著明だが感染の後期(粘膜が萎縮した後)では小さい、若い方の除菌が胃癌予防のキーワードである、と述べています。さらに、次のように解説しています。

ピロリ菌に感染していると年間0.4%の確率で胃癌になると統計的に予測されています
例えば50歳の方で余生を30年と仮定すると胃癌になる確率=30X0.4=12%と予測できます
[中略]
厳密に調べると胃癌の患者さんでピロリ菌陰性の方は「非常に稀(1%)」です
[中略]
ただしこれは「ピロリ菌に長期感染した高齢者も除菌すれば胃癌にならない」というのとニュアンスが少し違います。

一番合理的な検査は?
http://naisikyou.com/iii/blood2.htm

同じサイト内の上の記事では、ABC検診(ピロリ菌検査とペプシノーゲン検査(慢性胃炎の検査))について紹介するとともに、次のとおり述べています。

慢性胃炎の進行する前に(若いうちに)早期にピロリ菌を除菌すれば胃癌は予防できます。

当サイトの管理人は、胃カメラもバリウムも苦しいと聞いていたため、それらの受診を躊躇していた時期がありました。その頃に上の2つの記事を読み、個人的に大変参考になりました。ABC検診も受診しました。同じサイト内に「キットによる自宅でのピロリ菌の検査・除菌システム(家族全員での検査が可能です)」(http://naisikyou.com/hongo/uv2.htm)というページもあります。サイト内の構成や、ページ同士のつながりがやや分かりづらい印象を個人的に受けますが、参考になる情報が豊富なので、関心のある方はサイト内をくまなくチェックするとよいと感じます。

ABC検診を上のように推奨するページがある一方、胃カメラやバリウムに比べると有効性が低いとする、以下の文献もあります。

「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン」(2014年版)
http://canscreen.ncc.go.jp/pdf/iganguide150331.pdf

国立がん研究センター がん予防・検診研究センターが2015年3月に公表したものです。このガイドラインでは、胃 X 線検査を「複数の観察研究において死亡率減少効果を示す相応な証拠があり、その結果には一貫性がある」(p1)、胃内視鏡検査 を「複数の観察研究において死亡率減少効果を示す相応な証拠がある」(p1)と評価しています。対策型検診(住民検診)としての実施、任意型検診(人間ドックなど)としての実施、いずれも推奨しています。

一方、このガイドラインにおいて、ペプシノゲン検査とヘリコバクターピロリ抗体検査の併用法(ABC検診)について「死亡率減少効果を検討した研究はなかった。不利益については偽陰性、偽陽性、過剰診断の可能性がある」(p2)とし、住民検診として実施することは勧められないことや、任意型検診(人間ドックなど)として実施する場合には、個人の判断に基づく受診は妨げない旨を述べています(p4、63など)。

おわりに

当ブログ管理人は、2018年に人間ドックを受診しました。検査項目にバリウムもABC検診も両方あり、今回も、前回までも、ABC検診は「異常なし」でした。ところが今回、バリウム検査の結果、「胃炎」とのことでした。人間ドック後の医師のコメントは次のようなものでした。

  • ABC検診が異常なしでも、胃炎がある場合はある。
  • 当ブログ管理人の胃炎の程度は軽い。と言うか、胃炎と判定するかどうか、医師によっても判断が分かれるレベルである。前回のレントゲン写真と同じ状態であり、前回と今回で判定を担当した医師が別々だったため、判定結果も分かれたものと思われる。

ネットでいろいろ勉強して(勉強したつもりになって)、「ABC検診で異常なしイコール胃炎はなし」だと思っていた身としては、上の結果とコメントは意外なものでした。考えてみれば、膨大な医学的知識を、ネット上でかじっただけで素人が完全に身につけるなんて、不可能だと思われます(立場を入れ替えて想像してみると、何年もかけて覚えた自分の仕事も、外部の人がすぐ替わりにできるものでじゃありませんし)。

ネットや新書などで事前に勉強し、予備知識を得ておくことは大事だと思いますが(ただし情報の真偽を見極める力を養うことも必要)、「検査方法は絶対これがよい(自分はこれしか受診しない!)」のように決めつけず、プロである医師の指示やコメントをよく聞くことが大切だな、と改めて思いました。それでも、自分にとってのメリットを考えるきっかけになりそうなので、胃がん検査には胃カメラか?バリウムか?を3回に分けてアップしました。

胃がん検査には胃カメラか?バリウムか?(2)

胃がん検査には胃カメラか?バリウムか?(1)の続きです。この投稿では、ひとつ前の投稿で紹介した記事とは異なる論調のウェブページを見ていきたいと思います。

胃の検査 http://www.katsuda-ichouka.or.jp/stomach.htm

上の記事では、胃がん、胃内視鏡検査(経口)、胃X線検査について解説したのち、「レントゲンと内視鏡、どっちがいいですか?」という項目を設けています。そこでは次のとおり述べています。

その質問に対する一番適切な答えは「両方一長一短があるから両方受けるのがいいでしょう」と答えるべきだろう。
[中略]
小さな病変が見つかると、レントゲンより内視鏡の評価が上がる。これはすばらしい事なのですが、一般に内視鏡を後でやるからこういう例ばかりが話題になる。しかし内視鏡の後でレントゲンをやると意外にも大きいガンが初めて発見される場合があることはあまり知られていない。
[中略]
レントゲンは胃の外側の病変も分かる事もある。また、スキルスという胃がんはレントゲンでは疑う余地のないほど明瞭に写るが、内視鏡では「そうかもしれない」程度しか分からない時がある。

このように述べたうえで、「バリウムがどうしても駄目な方は1年おきにレントゲンと内視鏡を交互にでも受ける事をおすすめします」と上の記事では述べています。「レントゲンが有用であった症例」というページへのリンクもあります。

院長コラム『胃カメラと胃バリウム検査』 https://www.sfc-dock.com/news/index.php?y=2016&m=01

上の記事では、「胃バリウム検査は、はたして、胃カメラに劣るのでしょうか」という問いを立てたうえで、次のとおり述べています。

実は、消化器内科医師の観点からしますと、胃カメラと胃バリウム検査とは、実はどちらが他方に勝っているという訳では必ずしもなく、本来、それらは相互に相補う検査方法と見なすべきと考えています。
実物の局所を分析できる胃カメラと、胃全体をレントゲンのかげ、陰影として総合評価できる胃バリウムとは相互補完されるべき検査どうしであり、両方実施して胃の全体像が概ね把握できるものと考えています。

このように述べたうえで、自身の不安、バリウムの負担と胃カメラの混み具合などを天秤にかけて、「たとえば、具体的には胃カメラと胃バリウム検査を隔年で交互に受けて頂いてもよろしいのではないか」と上の記事は提案しています。

一方、上の2つの記事のような論調(胃カメラが常に必ず勝っているわけではないという論調)を踏まえたうえで、次のウェブページは内視鏡検査を推奨しています。

人間ドックや会社の健康診断での胃バリウム検査だけで済ませていませんか? https://www.fukuoka-tenjin-naishikyo.com/knowledge/barium/

人によって、病気になるリスクや体質(どの検査を苦しいと感じるかなど)といった事情が異なるので、かかりつけの医師とも相談しつつ、最適と思われる検査を受けるのがよい、ということになるのでしょうか(管理人の個人的意見です)。

ABC検診や国立がん研究センター がん予防・検診研究センターによる「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン」(2014年度版)について、次回以降の投稿で見てみたいと思います。

胃がん検査には胃カメラか?バリウムか?(1)

ここ数年、人間ドックを継続的に受けています。受診している病院では、内視鏡検査(胃カメラ)かX線造影検査(バリウム)を選択することになっており、毎回悩みます。経験上、バリウムを飲んだ後は苦しいのですが、胃カメラのほうが苦しいと聞いたこともあるし・・・

医師などが書いたネット上の記事には、胃カメラを薦めるものが目立ちます。

胃がん検査にはバリウムよりも胃カメラを!胃がんだけでなく、食道がんも発見できる? https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/091200163/100500004/

胃カメラとバリウム検査は、両方とも一長一短があり、胃がん検診としてどちらが優れているか(=どちらが早期の胃がんをより見つけるか)は一概には言えないと前置きしたうえで、上の記事では次のとおり述べています。

ただし一つ、決定的に違うところがあります。それは胃カメラの場合、「食道も詳細に観察することができる」ということです。
[中略]
胃がん検診のついでに食道がん検診もできる胃カメラを選択した方が、当然、健康管理上のメリットは大きくなります。
実際に、消化器専門の医師で、自分の胃がん検診をバリウム検査で行っている医師はほとんどいないと思います。少なくとも私の周囲には一人もいません。

現役医師がホンネで勧める「胃の検査」 https://allabout.co.jp/gm/gc/454230/

胃の検診には「胃バリウム検査」や「胃内視鏡検査」、「胃がんリスク検診(ABC検診)」があることや、それぞれについて紹介したうえで、次のとおり述べて、胃カメラを推奨しています。

消化器専門の医師に「自分が受けるなら、バリウムと内視鏡のどちらを受けますか?」と聞くと、ほぼ全員「内視鏡検査」と答えるでしょう。内視鏡検査の方がクリアに胃の中を見ることができ、同時に組織検査も行えるので、バリウム検査よりも優れていると考えている医師が多いからです。

上の記事では、「機材が同じでも、医師の腕前により検査のキツさや診断の正確さが異なる可能性」があるため、「担当医の情報があったほうが安心かもしれません」と述べています。しかし、医師の先生の腕前に関する正確な情報を一般の受診者が得るのは、簡単ではないようにも感じます。

胃がん検診は胃X線検査(バリウム)か胃カメラか https://www.yoshiokaclinic.com/blog/2013/10/x-650518.html

上の記事は、以下の引用箇所のように、胃カメラを強く薦めています。胃がん検診として推奨できるのは胃のX線検査(バリウム検査)のみという「胃がん検診ガイドライン」案(当時。2018年現在は異なります)に対して、強く反論しています。

皆さんはできる限り胃カメラを選択なさってください。
バリウム検査も受けないよりは受けた方がましですので、
胃カメラがどうしても苦手な方はそちらもご考慮ください。

上の2つめの記事にも書いてあるとおり、胃がん検査には胃カメラやバリウムのほか、ABC検診というものもあります。また、上の3つの記事と異なる論調のウェブページもあります。さらに、国立がん研究センター がん予防・検診研究センターが「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン」(2014年度版)を策定しています。それらについて、次回以降の投稿で見てみたいと思います。