東大生の親は高収入か?

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しばらく、育児・子育て、その他教育関連のことを書いてみたいと思います。

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ベストセラーになった『「学力」の経済学』(中室牧子.Kindle版,ディスカヴァー・トゥエンティワン,2015年,位置No. 138-141)は、「東大生の親の平均年収は約「1000万円」」という見出しで、次のとおり述べています。

「学生生活実態調査」(2012年)によると、東京大学では、親世帯の平均年収は約1000万円となっており、世帯収入が950万円以上の学生の割合がなんと約57%を占めています。

「民間給与実態調査」(2012年)における給与所得者1人あたりの平均年収が408万円、「家計調査」の2人以上勤労者世帯の平均年収が623万円[中略]ですから、東大生の親の所得がいかに突出して高いか、おわかりいただけるでしょう。

『「学力」の経済学』は2015年発行ですので、上の各調査も2012年と、今ではやや古いです。ですが、より新しい『2018年(第68回)学生生活実態調査報告書』(東京大学学生委員会学生生活調査WG)でも、世帯の年収分布額は大差ありません。世帯の年収が950万円以上の学生の割合が約60%を占めており、平均値、中央値ともに約1000万円です(図24(p.41),資料1の質問34,35,資料2の5-4-1表)。

上の数字を見ると、東大生の親はたしかに高収入なように思えます。そういうイメージが世間一般にも浸透しているような気もします(例えば、上の引用箇所と似たようなネット記事をたまに見るような気もします)。ですが、よく考えてみると、必ずしもそうではないかもしれません。すなわち以下のごとくです。

東大の学部学生には1年生から4年生(学部によっては6年生)までいます。現役で合格した人も、浪人して合格した人もいます。留年中の人も中にはいるでしょう。ひとまず、平均年齢を21歳と仮定してみます。

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すると、上の『2018年(第68回)学生生活実態調査報告書』は2018年11~12月に調査を実施したと書いてるので(p.1)、平均すると1997年生まれの東大生を対象にした調査だったといえます。

1997(平成9)年の人口動態調査によれば、当時、父親になった人の平均年齢は31.7歳、母親になった人の平均年齢は29.3歳でした(表4.19,表4.20)。東大生のお父さんお母さんも同様であると仮定します(実際には、東大生のお父さんお母さんには大卒や大学院卒が多く、就職する年齢が平均より高いなどのため、親になる年齢も平均より高いかもしれませんが、ここでは上のとおり仮定します)。

ということは、2018年時点で、東大生のお父さんの平均年齢は52.7歳、お母さんは50.3歳です。「給与所得者1人あたりの平均年収が408万円」などの上の数字は、例えば20歳代の給与所得者なども含めた、平均です。同じ年齢の人たちの平均年収と比較しなければ、東大生の親は高収入であるとはいえません。

また、東大には全国の天才・秀才が集結するようなイメージがあるかもしれませんが、実は、上の『2018年(第68回)学生生活実態調査報告書』によると、東大生の実家の所在地は東京都が35.2%であり、東京都以外の「関東」が34.5%です(図21(p.39),資料1の質問32,資料2の5-1表)。つまり約70%が関東出身です。関東の出身者が多い理由は、地方の場合、東大でなくその地方の大学の医学部などをめざす高校生もいる、勉強ばかりするのを潔しとせず、部活や学校行事などに積極的に取り組むことをよしとする校風の進学校もある、「何となくおっかない」のように感じて東京に出たがらない高校生もいる(本人も親も無理をしない・させない)、関東に比べて地方(例えば北海道や東北地方など)は高校生の数がそもそも少ない、などがありうると思います(個人的な予想です。厳密に調べたわけではありません)。

話が少しそれました。何を言いたいかというと、企業の本社が首都圏に集まっているなどするので、関東地方の勤労者の平均年収は、その他の地方よりもそもそも高そうです。実際、2018年の『家計調査』では、「二人以上の世帯のうち勤労者世帯」の平均年収が約670万円であるのに対し(第1-2表)、関東地方では約723万円、「東京都区部」に限ると約786万円です(第2表)。関東地方は全体平均の約1.08倍、「東京都区部」は約1.17倍です(1)。

また、上の「平均年収が約670万円」は、世帯主が若い世帯も含めた、全体の平均です。世帯主の年齢階級別に見ると、東大生のお父さんお母さんが当てはまる、50~59歳の階級の年収は約772万円です(第4表)。全体平均の約1.15倍に当たります(2)。

上の(1)と(2)をごく単純に組み合わせると、東大生の実家所在地の約70%を占める関東地方で、世帯主が50~59歳の階級の年収は、約670万円(全体平均)×1.08×1.15=約832万円になります。「東京都区部」で計算すると約901万円です。

日本全国の大学図書館の蔵書を検索できるCiNiiや、国立国会図書館の蔵書を検索できる国立国会図書館オンラインによると、学生生活実態調査はほかの複数の大学で実施されています。東大生の親の年収をそれらと比較すると、何か見えてくるかもしれません。

ほかにも、「政府における教育政策の実施にかかる資料として分析するほか、新聞、進学雑誌等で掲載され、大学進学を目指す方に、[大学で必要な費用の目安]として参考とされています」とうたう調査に、日本学生支援機構の『学生生活調査』があります。その平成30年度版では、「学生の家庭の年間平均収入額」は大学(昼間部)で862万円となっています(p.10)。これは全国の平均ですので、上の(1)を単純に当てはめると、大学生の親の年収は、関東地方なら全体平均の約931万円、「東京都区部」なら約1009万円という計算になります。

以上はごく単純な試算であって、ほかの要因もあるでしょうから、実態を正確に表してはいないかもしれません。ですが少なくとも、『「学力」の経済学』が強調するほどには、東大生の親の年収が突出して高いとはいえないように思います(ただし、ごく単純な上の計算によれば、東大生の親の年収は、「関東地方や東京都区部に住む、同じ年齢層」の平均より高そうです。また、地域性を計算に入れると、東大生の親の年収は、ほかの大学生の親の年収と大差ないことになります)(※)。

なお、上の『2018年(第68回)学生生活実態調査報告書』によると、世帯の年収が1550万円以上の東大生が16.1%に上ります(図24(p.41),資料2の5-4-1表)。世間一般にはほとんどいないほどの高収入だなと一瞬思えますが、考えてみると、「両親がどちらも公務員や教員で、共働き」のような家庭で、かつ、上記のとおり、お父さんが52.7歳、お母さんが50.3歳、東京都やそれ以外の関東在住の場合(公務員は、民間賃金の高い地域に勤務する場合、地域手当が支給されます)、子どもが東大生であろうとなかろうと、世帯収入が1550万円あってもおかしくはありません。

一方で、13.2%の東大生は、世帯の年収が450万円未満です(図24(p.41),資料2の5-4-1表)。

本エントリーの結びとしては、次のようにいえます。『「学力」の経済学』が強調していたり、ひょっとすると世間一般でイメージされているほどには、東大生の親の年収が突出して高いとはいえないように思えます。むしろ、(ごく単純な計算ですが)地域性を計算に入れると、東大生の親の年収は、ほかの大学生の親の年収と大差ないことになります。ただし、東大生の親の年収は、「関東地方や東京都区部に住む、同じ年齢層」の平均よりおそらく高いです。また、親の年収が高くないだけで、即、子どもを東大に入れることができないとはならないように思えます(※)。

※補足を一つ。上の『学生生活調査』で、「学生の家庭の年間平均収入額」は大学(昼間部)で862万円となっていることを紹介しました。ですが同調査は、各地方からどの割合で調査対象の学生を抽出したか、書いていません。『学校基本調査』によると、大学生は関東、特に東京に多く集まっています(高等教育機関《報告書掲載集計》7 都道府県別学校数及び学生数)。そのため、ひょっとすると、上の『学生生活調査』の回答者には関東の大学生が多いかもしれません。「関東の大学生だが、実家の所在地はほかの地方である」という場合もありますのでややこしいところですが、もし、「実家の所在地が関東である」という回答者が多い場合、上の「東大生の親の年収は、ほかの大学生の親の年収と大差ない」は、言い過ぎていることになります。

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投稿者: まなびや

まなびやと申します。 このサイトでは、ネット上で見つけた興味深いウェブページを紹介・レビューしていきます。それ以外の独自記事も徐々に書きます。ジャンルは医療・健康、人間関係・対人関係、結婚・妊娠出産・育児子育て、介護、ビジネス・マネーなどなど。

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