(書評記事)『困った性格の人とのつき合いかた』(5)

(書評記事)『困った性格の人とのつき合いかた』(4)の続きです。

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ところで、繰り返し述べてきたように(そもそも、書評記事にして本書を紹介していることからも分かるように)、人間関係・対人関係に悩む人にとって、本書はとても参考になると個人的に思います。でも、相手は「困った性格の人」です。強烈な人、とても手ごわい人とも言えるかもしれません。本書が紹介している対処法を使ったとして、困った性格の人との関係や問題が、ある程度は改善するとしても、すぐに全面的に解決するでしょうか?

残念ながら、答えはNoのようです。本書は次のとおり述べています。

どれだけ私たちの側の対応法が完璧でも、困った性格の人たちとの関係で問題が完全になくなることはあり得ない(p216)

困った性格の人は、自分自身でその問題を自覚し、自分自身で治していかないことには、困った性格のままであり続けるでしょうし、そうあり続ける限り、対人関係で問題を生じなくなることはない(p216)

また、ひょっとしたら、いわゆる困った性格の人、あるいは、その表現では足りないほど相手に迷惑を与える人のなかには、反社会性パーソナリティ障害の人が含まれているかもしれません。本書によると、「あまりに他者に対する共感性・愛情が乏しく、平気で他人を搾取し、傷つけることを繰り返し、実際に犯罪者であることが多い(*)」(p57)人であり、「人の心を持ち合わせていないところがあり、どんな治療をしても治ることがないという点で他のパーソナリティ障害とは違いすぎる」(p57)ため、そもそも本書の対象外とされています。このタイプの人が問題を起こした場合、個人レベルで対応するのではなく、司法に委ねるべきケースが多い、ということになるのかもしれません。

(*)念のため付け加えておくと、反社会性パーソナリティ障害の人は、犯罪者であることが多く、治ることがないと本書は述べているのであって、その逆ではありません。すなわち、犯罪者は全員反社会性パーソナリティ障害であり、犯罪者は全員更生の余地がないとは本書は述べていません。なお個人的には、反社会性パーソナリティ障害じたいは治らないとしても、「反社会性パーソナリティ障害の人が、損得勘定に基づいて(悪いことをすると、刑罰やその他のペナルティを受けるなどして結局は損であることに気づいて)犯罪や犯罪まがいの行為をしなくなる」ということがあるかどうかに関心があります。

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当ブログで紹介したのはエッセンスであり、興味のある方にはぜひ本書を手に取っていただければと思います。人間関係や人間の心理を言い当てている、鋭いフレーズもたくさんあります。

本書を折に触れて読み返し、また、本書が紹介している対処法を何度も練習することによって、人間関係・対人関係の悩みを減らしていきたいと思います。

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(書評記事)『困った性格の人とのつき合いかた』(4)

(書評記事)『困った性格の人とのつき合いかた』(3)の続きです。

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上のような発言((書評記事)『困った性格の人とのつき合いかた』(3)を参照ください)を読むと、本書は一見、「他人に対して指示的なことを一切言わないよう、徹底せよ」という論調のようにも思えますが、そうではありません。相手の領域にまで踏み込むなと言っているのであって、自分の領域に踏み込まれた場合には、それをやめるよう、むしろはっきりと主張すべきである、相手の領域を侵す行動はすべきでないが、自分の領域を守るための行動はきちんとすべきであると本書は述べています。そのことは例えば、次の記述から見て取れます。

自分の縄張りの中には自分独自の価値観、ルール、やりかたがあることを相手に尊重させるべく、必要な時には(相手の縄張りを逆に侵害するのではなく正当な形で)しっかりと主張する(p167)

対人関係の境界線があることを意識し、相手の縄張りを尊重し(同時に自分の縄張りを尊重させ)、境界線を踏み越えての手出しや口出しを「しない/させない」といったことが非常に重要です(p167)

対人関係の境界線の向こう側、相手の領域にあることに手出しや口出しをしないということは、相手との関係で、自分のできること、できないこと、すべきこと、すべきでないこと、を明確にしていくことを意味します(p171)

相手との関係で、自分の側の問題は自分でしっかり気づき、責任を持って引き受け、治していくことが、自分のできること、すべきことです。逆に、相手の側の問題は、どんなに気になっても、それをどうこうするのは相手がすべきことであって、自分がすべきことでも、できることでもありません。厳しく冷たいことを言っているように聞こえるかもしれませんが、相手の問題は相手の問題なのです(p172)

「第5章 自分自身がより強くなるためのいくつかの方法」では、「私たち自身が私たち自身の精神的な力や、いろいろな物事に対する対処能力、対人関係でのコミュニケーション能力を向上するための行動療法的な練習法」(p218)について解説しています。第4章と同様、「実際に自分で行動してみて、何度も何度も地味で地道な練習を繰り返して、何週間も続けて、やっと効果が出てくるもの」(p219)だと強調しています。コミュニケーションスキル自分自身の気持ちにしっかり気づく練習(マインドフルネス)などを紹介しています。詳細は、本書をぜひ手に取ってご覧ください。

なお、第4章、第5章で述べている様々な対処法のほかにも、本書のなかに「相手の領域に侵入しすぎないように境界線を意識しながら、大人で事務的な対応を淡々と続けていく」(p48)という表現があることに気づきました。これは、「困った性格の人」への対応とは別の文脈で登場する表現ですが、このような対応の仕方も効果的かもしれないな、と個人的に感じました。

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(書評記事)『困った性格の人とのつき合いかた』(3)

(書評記事)『困った性格の人とのつき合いかた』(2)の続きです。

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「第4章 困った性格の人への対処法」以降で具体的な対策を述べています。ポイントになるのは、本書で述べている対策は“対人関係行動”だという点です。頭で理解するだけではなかなか身につくものではなく、「具体的なレベルで理解し、実際にやってみて、何度も練習を繰り返し、ようやく身につくもの」(p160)だと指摘しています。

本書が繰り返し強調していることは、困った性格の人とかかわりあうとき、ネガティブな感情ややり取りの悪循環が起こる、という点です。本書は次のとおり述べています。

困った性格の人と私たちの間で、「彼ら/彼女ら」が私たちに引き起こすネガティブな感情に突き動かされて、私たちが「彼ら/彼女ら」に対してネガティブな感情をぶつけ返すようなことをしてしまうと、どんどんネガティブ・スパイラル的に感情の悪循環が起こり、次第に手におえないものになっていく[中略]逆に言うと、この感情の悪循環に私たちがしっかり気づき、それを断っていくことで、トラブルのかなりの部分を防ぐことができます(p174-175)

悪循環を防ぐためには、ではどうすればよいでしょうか。まず、「困った性格の人」が私たちにネガティブな感情を引き起こす際、何が起こるのでしょうか。第4章のはじめに「総論 すべてに共通して言えること」という項があり、大変参考になるなあと個人的に思うのですが、そこには次のとおりあります。

本来的には相手が自分自身で引き受け抱えておくべき嫌な感情を押しつけてくることによって(その嫌な感情の受け手である私たちが不本意にもそれを引き受けてしまうことによって)不快感を感じる(p159)

これに関して本書が強調するのは「境界線」です。本来的には自分自身が引き受けておくべき嫌な感情を、対人関係の境界線を越えて相手に押しつけるべきではありませんし、それを引き受けるべきでもありません。本書は次のとおり述べています。

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[国と国との間に国境線があるように]「対人関係においても、私たち一人ひとりは他人との間に“境界線”を持っており、どんなに親しい関係においてもそれはあります。境界線から向こう側は、私たちとは違う人がいるのであり、私たちとは違う価値観やルールがあり、違う「別の文化」があると考えるべきです。
この対人関係の境界線の存在をしっかりと理解し、境界線から向こう側に住んでいる「別の人」が大切にしている「別の文化」をしっかり尊重していくことは、安定した対人関係を続けていくうえで必須となります(p161-162)

私たちは自分の側の問題は自分で責任を持ち、自分で治していかなくてはなりませんが、相手の側の問題まで引き受けてもいけない(p162)

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(書評記事)『困った性格の人とのつき合いかた』(2)

(書評記事)『困った性格の人とのつき合いかた』(1)の続きです。

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「第2章 困った性格のタイプ分け」では、パーソナリティ障害について、分類や本質的な問題、随伴する特徴などを解説しています。いくつもあるパーソナリティ障害のうち、「境界性パーソナリティ障害」と「自己愛性パーソナリティ障害」、そして「ヒステリー性格」(精神医学で言う「ヒステリー性格」(詳細はp100-)です。一般用語、日常会話の「ヒステリー」とは異なります)の3つを、日常生活を送る中でよく出会う「困った性格の人」として本書で取り上げるとしています。57ページの図表に、なぜその3つを取り上げるのか、説明が書いてあります。

なお、いわゆる「困った性格の人」に大変な思いをさせられた経験が当ブログ管理人には何回かありますが、振り返ってみると、彼ら/彼女らは上の3つのタイプのどれかにドンピシャというわけでもなかったな、と感じます。58ページの図表には「特定不能のパーソナリティ障害」(「その人のパーソナリティの様式がパーソナリティ障害の全般的基準を満たしており、いくつかの異なったパーソナリティ障害の傾向が存在しているが、どの特定のパーソナリティ障害の基準も満たしていない」ものなど)が挙げられています。また、「パーソナリティ障害とまではいかない「より軽度な性格病理」」のような表現も本書に複数回登場します。本書が解説する、困った性格の人への対処法の原則をしっかり学び、上の3つに合致しないようなタイプの「困った性格の人」ともやっていけるようになりたいところです。

「困った性格」に関して、第1章と第2章で解説がなされます。それでは対策は?と思いますが、困った性格の人への具体的な対応法を考える前に、「第3章 困った性格の病因論:なぜ人は困った性格になってしまうのか」では、困った性格はどのようにして生まれるのか(=精神医学の言葉で言う「パーソナリティ障害」や、パーソナリティ障害とまではいかない「より軽度な性格病理」の問題はどのように生じるのか)、ということについて述べています。けっこう「身もふたもない」内容のように思えますが、科学的・精神医学的な見解を述べており、大変参考になります。

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(書評記事)『困った性格の人とのつき合いかた』(1)

人間関係・対人関係に関する、とても面白い本を先日読みました。『困った性格の人とのつき合いかた』(すばる舎、2013年)という本です。書評記事を書いて、当ブログに来ていただいた方々に紹介させていただきたいと思います。

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“理不尽なほどのストレス”を感じさせられてしまう「困った性格の人」に大変な思いをさせられた経験がある、または、いま現在大変な思いをさせられているといったことが、読者の皆さまにはありますでしょうか?当ブログ管理人にはあります。

精神科医による本書は、タイトルのとおり、「困った性格の人とのつき合いかた」で悩んでいる人に対して、大きなヒントを与えてくれます。とりわけ、「困ったことに私たちの社会生活では、性格的につき合いづらいからと言って、その人から離れることができないことも多いでしょう。「困った性格の人」という側面はあっても、同じ職場の上司・同僚・部下だったり、家族・親族だったり、大切な友人や恋人でもあったりします」(p5)。本書は、そうした状況で困っている人に向けて書かれたものであるとされています。

たしかに、本書(特に、具体的な対策が書いてある第4章以降)を読んでいくと、相手の価値観等に対する「一応の理解と尊重」、「一定の理解と尊重」といった表現が複数登場するなど、「相手との関係を続けていく」という前提にたって議論をしていることが見て取れます。もし仮に、「嫌いな相手と後腐れなくスパッと縁を切るための本」があるとすれば、本書とは全く別の論調になるかもしれないな、と思います。

「第1章 あなたの隣の困った性格の人」では、困った性格のタイプとして境界性パーソナリティなど4種類を事例とともに紹介しています。また、私たちが特定の対人関係を「ストレスだ」「関わりたくない」「困った人だ」と感じるのはどのような場合か、3つのパターンを解説しています。

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そのパターンのひとつとして、私たち個人が本来的には自分自身で引き受け、抱えておかなくてはならない嫌な感情を、他人に押しつけようとしてしまう性向(p41)――「自分自身の感情をコントロールするために、他人の心を使ってしまう」(p42)とも表現されています――に対する抵抗感から対人関係のストレスが生じると解説しており、「自分が顧客に怒鳴られてむしゃくしゃしている気持ちを発散させるために、後輩に八つ当たりして怒鳴りつけてみたりする」(p42)ことなどを例に挙げています。なるほどなと感じました。

この対人ストレスについて、「自分と相手の間に生じる嫌な感情について、自分側の問題と相手側の問題を現実的に冷静に切り分けて考えていくこと、自分と相手の間にある境界線を明確にしていくことで、ある程度は整理しやすくなる」(p43)と述べています。このタイプのストレスを感じたときだけでなく、このタイプのストレスを生む行動を自分がつい取ってしまいそうになったとき、自戒したいと思いました。

上のような議論を経て、本章の終盤では、性格的な問題によって「つき合いづらい」と感じられてしまう人たちには「対人関係における境界線を踏み越えて“マイ常識”“マイルール”を押しつけて他者を支配しようとしてきたり、自分の感情をコントロールするためにネガティブな感情を他者に押しつけるという形で他者の心を使ってしまう、ということが目立って多い」(p49)特徴があることを指摘しています。たしかに、いわゆる「困った性格の人」とのかかわりから大きなストレスを受ける経験を当ブログ管理人もしたことがありますが、その人たちの特徴を冷静に言語化すると、上のとおりだなと感じます。

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