(書評記事)『困った性格の人とのつき合いかた』(3)の続きです。
上のような発言((書評記事)『困った性格の人とのつき合いかた』(3)を参照ください)を読むと、本書は一見、「他人に対して指示的なことを一切言わないよう、徹底せよ」という論調のようにも思えますが、そうではありません。相手の領域にまで踏み込むなと言っているのであって、自分の領域に踏み込まれた場合には、それをやめるよう、むしろはっきりと主張すべきである、相手の領域を侵す行動はすべきでないが、自分の領域を守るための行動はきちんとすべきであると本書は述べています。そのことは例えば、次の記述から見て取れます。
自分の縄張りの中には自分独自の価値観、ルール、やりかたがあることを相手に尊重させるべく、必要な時には(相手の縄張りを逆に侵害するのではなく正当な形で)しっかりと主張する(p167)
対人関係の境界線があることを意識し、相手の縄張りを尊重し(同時に自分の縄張りを尊重させ)、境界線を踏み越えての手出しや口出しを「しない/させない」といったことが非常に重要です(p167)
対人関係の境界線の向こう側、相手の領域にあることに手出しや口出しをしないということは、相手との関係で、自分のできること、できないこと、すべきこと、すべきでないこと、を明確にしていくことを意味します(p171)
相手との関係で、自分の側の問題は自分でしっかり気づき、責任を持って引き受け、治していくことが、自分のできること、すべきことです。逆に、相手の側の問題は、どんなに気になっても、それをどうこうするのは相手がすべきことであって、自分がすべきことでも、できることでもありません。厳しく冷たいことを言っているように聞こえるかもしれませんが、相手の問題は相手の問題なのです(p172)
「第5章 自分自身がより強くなるためのいくつかの方法」では、「私たち自身が私たち自身の精神的な力や、いろいろな物事に対する対処能力、対人関係でのコミュニケーション能力を向上するための行動療法的な練習法」(p218)について解説しています。第4章と同様、「実際に自分で行動してみて、何度も何度も地味で地道な練習を繰り返して、何週間も続けて、やっと効果が出てくるもの」(p219)だと強調しています。コミュニケーションスキル、自分自身の気持ちにしっかり気づく練習(マインドフルネス)などを紹介しています。詳細は、本書をぜひ手に取ってご覧ください。
なお、第4章、第5章で述べている様々な対処法のほかにも、本書のなかに「相手の領域に侵入しすぎないように境界線を意識しながら、大人で事務的な対応を淡々と続けていく」(p48)という表現があることに気づきました。これは、「困った性格の人」への対応とは別の文脈で登場する表現ですが、このような対応の仕方も効果的かもしれないな、と個人的に感じました。
長くなったので次のエントリーに続きます。