胃がん検査には胃カメラか?バリウムか?(3)

胃がん検査には胃カメラか?バリウムか?(2)の続きです。この投稿では、ABC検診や国立がん研究センター がん予防・検診研究センターによる「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン」(2014年度版)に関する興味深いウェブページを見ていきたいと思います。

ピロリ菌は胃癌の最大原因
http://naisikyou.com/iii/ca2.htm

上の記事では、慢性胃炎の治療(=ピロリ菌の除菌)により胃がんが予防できる、予防効果は感染の初期(胃の粘膜が萎縮する前)は著明だが感染の後期(粘膜が萎縮した後)では小さい、若い方の除菌が胃癌予防のキーワードである、と述べています。さらに、次のように解説しています。

ピロリ菌に感染していると年間0.4%の確率で胃癌になると統計的に予測されています
例えば50歳の方で余生を30年と仮定すると胃癌になる確率=30X0.4=12%と予測できます
[中略]
厳密に調べると胃癌の患者さんでピロリ菌陰性の方は「非常に稀(1%)」です
[中略]
ただしこれは「ピロリ菌に長期感染した高齢者も除菌すれば胃癌にならない」というのとニュアンスが少し違います。

一番合理的な検査は?
http://naisikyou.com/iii/blood2.htm

同じサイト内の上の記事では、ABC検診(ピロリ菌検査とペプシノーゲン検査(慢性胃炎の検査))について紹介するとともに、次のとおり述べています。

慢性胃炎の進行する前に(若いうちに)早期にピロリ菌を除菌すれば胃癌は予防できます。

当サイトの管理人は、胃カメラもバリウムも苦しいと聞いていたため、それらの受診を躊躇していた時期がありました。その頃に上の2つの記事を読み、個人的に大変参考になりました。ABC検診も受診しました。同じサイト内に「キットによる自宅でのピロリ菌の検査・除菌システム(家族全員での検査が可能です)」(http://naisikyou.com/hongo/uv2.htm)というページもあります。サイト内の構成や、ページ同士のつながりがやや分かりづらい印象を個人的に受けますが、参考になる情報が豊富なので、関心のある方はサイト内をくまなくチェックするとよいと感じます。

ABC検診を上のように推奨するページがある一方、胃カメラやバリウムに比べると有効性が低いとする、以下の文献もあります。

「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン」(2014年版)
http://canscreen.ncc.go.jp/pdf/iganguide150331.pdf

国立がん研究センター がん予防・検診研究センターが2015年3月に公表したものです。このガイドラインでは、胃 X 線検査を「複数の観察研究において死亡率減少効果を示す相応な証拠があり、その結果には一貫性がある」(p1)、胃内視鏡検査 を「複数の観察研究において死亡率減少効果を示す相応な証拠がある」(p1)と評価しています。対策型検診(住民検診)としての実施、任意型検診(人間ドックなど)としての実施、いずれも推奨しています。

一方、このガイドラインにおいて、ペプシノゲン検査とヘリコバクターピロリ抗体検査の併用法(ABC検診)について「死亡率減少効果を検討した研究はなかった。不利益については偽陰性、偽陽性、過剰診断の可能性がある」(p2)とし、住民検診として実施することは勧められないことや、任意型検診(人間ドックなど)として実施する場合には、個人の判断に基づく受診は妨げない旨を述べています(p4、63など)。

おわりに

当ブログ管理人は、2018年に人間ドックを受診しました。検査項目にバリウムもABC検診も両方あり、今回も、前回までも、ABC検診は「異常なし」でした。ところが今回、バリウム検査の結果、「胃炎」とのことでした。人間ドック後の医師のコメントは次のようなものでした。

  • ABC検診が異常なしでも、胃炎がある場合はある。
  • 当ブログ管理人の胃炎の程度は軽い。と言うか、胃炎と判定するかどうか、医師によっても判断が分かれるレベルである。前回のレントゲン写真と同じ状態であり、前回と今回で判定を担当した医師が別々だったため、判定結果も分かれたものと思われる。

ネットでいろいろ勉強して(勉強したつもりになって)、「ABC検診で異常なしイコール胃炎はなし」だと思っていた身としては、上の結果とコメントは意外なものでした。考えてみれば、膨大な医学的知識を、ネット上でかじっただけで素人が完全に身につけるなんて、不可能だと思われます(立場を入れ替えて想像してみると、何年もかけて覚えた自分の仕事も、外部の人がすぐ替わりにできるものでじゃありませんし)。

ネットや新書などで事前に勉強し、予備知識を得ておくことは大事だと思いますが(ただし情報の真偽を見極める力を養うことも必要)、「検査方法は絶対これがよい(自分はこれしか受診しない!)」のように決めつけず、プロである医師の指示やコメントをよく聞くことが大切だな、と改めて思いました。それでも、自分にとってのメリットを考えるきっかけになりそうなので、胃がん検査には胃カメラか?バリウムか?を3回に分けてアップしました。

胃がん検査には胃カメラか?バリウムか?(2)

胃がん検査には胃カメラか?バリウムか?(1)の続きです。この投稿では、ひとつ前の投稿で紹介した記事とは異なる論調のウェブページを見ていきたいと思います。

胃の検査 http://www.katsuda-ichouka.or.jp/stomach.htm

上の記事では、胃がん、胃内視鏡検査(経口)、胃X線検査について解説したのち、「レントゲンと内視鏡、どっちがいいですか?」という項目を設けています。そこでは次のとおり述べています。

その質問に対する一番適切な答えは「両方一長一短があるから両方受けるのがいいでしょう」と答えるべきだろう。
[中略]
小さな病変が見つかると、レントゲンより内視鏡の評価が上がる。これはすばらしい事なのですが、一般に内視鏡を後でやるからこういう例ばかりが話題になる。しかし内視鏡の後でレントゲンをやると意外にも大きいガンが初めて発見される場合があることはあまり知られていない。
[中略]
レントゲンは胃の外側の病変も分かる事もある。また、スキルスという胃がんはレントゲンでは疑う余地のないほど明瞭に写るが、内視鏡では「そうかもしれない」程度しか分からない時がある。

このように述べたうえで、「バリウムがどうしても駄目な方は1年おきにレントゲンと内視鏡を交互にでも受ける事をおすすめします」と上の記事では述べています。「レントゲンが有用であった症例」というページへのリンクもあります。

院長コラム『胃カメラと胃バリウム検査』 https://www.sfc-dock.com/news/index.php?y=2016&m=01

上の記事では、「胃バリウム検査は、はたして、胃カメラに劣るのでしょうか」という問いを立てたうえで、次のとおり述べています。

実は、消化器内科医師の観点からしますと、胃カメラと胃バリウム検査とは、実はどちらが他方に勝っているという訳では必ずしもなく、本来、それらは相互に相補う検査方法と見なすべきと考えています。
実物の局所を分析できる胃カメラと、胃全体をレントゲンのかげ、陰影として総合評価できる胃バリウムとは相互補完されるべき検査どうしであり、両方実施して胃の全体像が概ね把握できるものと考えています。

このように述べたうえで、自身の不安、バリウムの負担と胃カメラの混み具合などを天秤にかけて、「たとえば、具体的には胃カメラと胃バリウム検査を隔年で交互に受けて頂いてもよろしいのではないか」と上の記事は提案しています。

一方、上の2つの記事のような論調(胃カメラが常に必ず勝っているわけではないという論調)を踏まえたうえで、次のウェブページは内視鏡検査を推奨しています。

人間ドックや会社の健康診断での胃バリウム検査だけで済ませていませんか? https://www.fukuoka-tenjin-naishikyo.com/knowledge/barium/

人によって、病気になるリスクや体質(どの検査を苦しいと感じるかなど)といった事情が異なるので、かかりつけの医師とも相談しつつ、最適と思われる検査を受けるのがよい、ということになるのでしょうか(管理人の個人的意見です)。

ABC検診や国立がん研究センター がん予防・検診研究センターによる「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン」(2014年度版)について、次回以降の投稿で見てみたいと思います。

胃がん検査には胃カメラか?バリウムか?(1)

ここ数年、人間ドックを継続的に受けています。受診している病院では、内視鏡検査(胃カメラ)かX線造影検査(バリウム)を選択することになっており、毎回悩みます。経験上、バリウムを飲んだ後は苦しいのですが、胃カメラのほうが苦しいと聞いたこともあるし・・・

医師などが書いたネット上の記事には、胃カメラを薦めるものが目立ちます。

胃がん検査にはバリウムよりも胃カメラを!胃がんだけでなく、食道がんも発見できる? https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/091200163/100500004/

胃カメラとバリウム検査は、両方とも一長一短があり、胃がん検診としてどちらが優れているか(=どちらが早期の胃がんをより見つけるか)は一概には言えないと前置きしたうえで、上の記事では次のとおり述べています。

ただし一つ、決定的に違うところがあります。それは胃カメラの場合、「食道も詳細に観察することができる」ということです。
[中略]
胃がん検診のついでに食道がん検診もできる胃カメラを選択した方が、当然、健康管理上のメリットは大きくなります。
実際に、消化器専門の医師で、自分の胃がん検診をバリウム検査で行っている医師はほとんどいないと思います。少なくとも私の周囲には一人もいません。

現役医師がホンネで勧める「胃の検査」 https://allabout.co.jp/gm/gc/454230/

胃の検診には「胃バリウム検査」や「胃内視鏡検査」、「胃がんリスク検診(ABC検診)」があることや、それぞれについて紹介したうえで、次のとおり述べて、胃カメラを推奨しています。

消化器専門の医師に「自分が受けるなら、バリウムと内視鏡のどちらを受けますか?」と聞くと、ほぼ全員「内視鏡検査」と答えるでしょう。内視鏡検査の方がクリアに胃の中を見ることができ、同時に組織検査も行えるので、バリウム検査よりも優れていると考えている医師が多いからです。

上の記事では、「機材が同じでも、医師の腕前により検査のキツさや診断の正確さが異なる可能性」があるため、「担当医の情報があったほうが安心かもしれません」と述べています。しかし、医師の先生の腕前に関する正確な情報を一般の受診者が得るのは、簡単ではないようにも感じます。

胃がん検診は胃X線検査(バリウム)か胃カメラか https://www.yoshiokaclinic.com/blog/2013/10/x-650518.html

上の記事は、以下の引用箇所のように、胃カメラを強く薦めています。胃がん検診として推奨できるのは胃のX線検査(バリウム検査)のみという「胃がん検診ガイドライン」案(当時。2018年現在は異なります)に対して、強く反論しています。

皆さんはできる限り胃カメラを選択なさってください。
バリウム検査も受けないよりは受けた方がましですので、
胃カメラがどうしても苦手な方はそちらもご考慮ください。

上の2つめの記事にも書いてあるとおり、胃がん検査には胃カメラやバリウムのほか、ABC検診というものもあります。また、上の3つの記事と異なる論調のウェブページもあります。さらに、国立がん研究センター がん予防・検診研究センターが「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン」(2014年度版)を策定しています。それらについて、次回以降の投稿で見てみたいと思います。