(書評記事)『困った性格の人とのつき合いかた』(5)

(書評記事)『困った性格の人とのつき合いかた』(4)の続きです。

ところで、繰り返し述べてきたように(そもそも、書評記事にして本書を紹介していることからも分かるように)、人間関係・対人関係に悩む人にとって、本書はとても参考になると個人的に思います。でも、相手は「困った性格の人」です。強烈な人、とても手ごわい人とも言えるかもしれません。本書が紹介している対処法を使ったとして、困った性格の人との関係や問題が、ある程度は改善するとしても、すぐに全面的に解決するでしょうか?

残念ながら、答えはNoのようです。本書は次のとおり述べています。

どれだけ私たちの側の対応法が完璧でも、困った性格の人たちとの関係で問題が完全になくなることはあり得ない(p216)

困った性格の人は、自分自身でその問題を自覚し、自分自身で治していかないことには、困った性格のままであり続けるでしょうし、そうあり続ける限り、対人関係で問題を生じなくなることはない(p216)

また、ひょっとしたら、いわゆる困った性格の人、あるいは、その表現では足りないほど相手に迷惑を与える人のなかには、反社会性パーソナリティ障害の人が含まれているかもしれません。本書によると、「あまりに他者に対する共感性・愛情が乏しく、平気で他人を搾取し、傷つけることを繰り返し、実際に犯罪者であることが多い(*)」(p57)人であり、「人の心を持ち合わせていないところがあり、どんな治療をしても治ることがないという点で他のパーソナリティ障害とは違いすぎる」(p57)ため、そもそも本書の対象外とされています。このタイプの人が問題を起こした場合、個人レベルで対応するのではなく、司法に委ねるべきケースが多い、ということになるのかもしれません。

(*)念のため付け加えておくと、反社会性パーソナリティ障害の人は、犯罪者であることが多く、治ることがないと本書は述べているのであって、その逆ではありません。すなわち、犯罪者は全員反社会性パーソナリティ障害であり、犯罪者は全員更生の余地がないとは本書は述べていません。なお個人的には、反社会性パーソナリティ障害じたいは治らないとしても、「反社会性パーソナリティ障害の人が、損得勘定に基づいて(悪いことをすると、刑罰やその他のペナルティを受けるなどして結局は損であることに気づいて)犯罪や犯罪まがいの行為をしなくなる」ということがあるかどうかに関心があります。

当ブログで紹介したのはエッセンスであり、興味のある方にはぜひ本書を手に取っていただければと思います。人間関係や人間の心理を言い当てている、鋭いフレーズもたくさんあります。

本書を折に触れて読み返し、また、本書が紹介している対処法を何度も練習することによって、人間関係・対人関係の悩みを減らしていきたいと思います。

(書評記事)『困った性格の人とのつき合いかた』(4)

(書評記事)『困った性格の人とのつき合いかた』(3)の続きです。

上のような発言((書評記事)『困った性格の人とのつき合いかた』(3)を参照ください)を読むと、本書は一見、「他人に対して指示的なことを一切言わないよう、徹底せよ」という論調のようにも思えますが、そうではありません。相手の領域にまで踏み込むなと言っているのであって、自分の領域に踏み込まれた場合には、それをやめるよう、むしろはっきりと主張すべきである、相手の領域を侵す行動はすべきでないが、自分の領域を守るための行動はきちんとすべきであると本書は述べています。そのことは例えば、次の記述から見て取れます。

自分の縄張りの中には自分独自の価値観、ルール、やりかたがあることを相手に尊重させるべく、必要な時には(相手の縄張りを逆に侵害するのではなく正当な形で)しっかりと主張する(p167)

対人関係の境界線があることを意識し、相手の縄張りを尊重し(同時に自分の縄張りを尊重させ)、境界線を踏み越えての手出しや口出しを「しない/させない」といったことが非常に重要です(p167)

対人関係の境界線の向こう側、相手の領域にあることに手出しや口出しをしないということは、相手との関係で、自分のできること、できないこと、すべきこと、すべきでないこと、を明確にしていくことを意味します(p171)

相手との関係で、自分の側の問題は自分でしっかり気づき、責任を持って引き受け、治していくことが、自分のできること、すべきことです。逆に、相手の側の問題は、どんなに気になっても、それをどうこうするのは相手がすべきことであって、自分がすべきことでも、できることでもありません。厳しく冷たいことを言っているように聞こえるかもしれませんが、相手の問題は相手の問題なのです(p172)

「第5章 自分自身がより強くなるためのいくつかの方法」では、「私たち自身が私たち自身の精神的な力や、いろいろな物事に対する対処能力、対人関係でのコミュニケーション能力を向上するための行動療法的な練習法」(p218)について解説しています。第4章と同様、「実際に自分で行動してみて、何度も何度も地味で地道な練習を繰り返して、何週間も続けて、やっと効果が出てくるもの」(p219)だと強調しています。コミュニケーションスキル自分自身の気持ちにしっかり気づく練習(マインドフルネス)などを紹介しています。詳細は、本書をぜひ手に取ってご覧ください。

なお、第4章、第5章で述べている様々な対処法のほかにも、本書のなかに「相手の領域に侵入しすぎないように境界線を意識しながら、大人で事務的な対応を淡々と続けていく」(p48)という表現があることに気づきました。これは、「困った性格の人」への対応とは別の文脈で登場する表現ですが、このような対応の仕方も効果的かもしれないな、と個人的に感じました。

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(書評記事)『困った性格の人とのつき合いかた』(3)

(書評記事)『困った性格の人とのつき合いかた』(2)の続きです。

「第4章 困った性格の人への対処法」以降で具体的な対策を述べています。ポイントになるのは、本書で述べている対策は“対人関係行動”だという点です。頭で理解するだけではなかなか身につくものではなく、「具体的なレベルで理解し、実際にやってみて、何度も練習を繰り返し、ようやく身につくもの」(p160)だと指摘しています。

本書が繰り返し強調していることは、困った性格の人とかかわりあうとき、ネガティブな感情ややり取りの悪循環が起こる、という点です。本書は次のとおり述べています。

困った性格の人と私たちの間で、「彼ら/彼女ら」が私たちに引き起こすネガティブな感情に突き動かされて、私たちが「彼ら/彼女ら」に対してネガティブな感情をぶつけ返すようなことをしてしまうと、どんどんネガティブ・スパイラル的に感情の悪循環が起こり、次第に手におえないものになっていく[中略]逆に言うと、この感情の悪循環に私たちがしっかり気づき、それを断っていくことで、トラブルのかなりの部分を防ぐことができます(p174-175)

悪循環を防ぐためには、ではどうすればよいでしょうか。まず、「困った性格の人」が私たちにネガティブな感情を引き起こす際、何が起こるのでしょうか。第4章のはじめに「総論 すべてに共通して言えること」という項があり、大変参考になるなあと個人的に思うのですが、そこには次のとおりあります。

本来的には相手が自分自身で引き受け抱えておくべき嫌な感情を押しつけてくることによって(その嫌な感情の受け手である私たちが不本意にもそれを引き受けてしまうことによって)不快感を感じる(p159)

これに関して本書が強調するのは「境界線」です。本来的には自分自身が引き受けておくべき嫌な感情を、対人関係の境界線を越えて相手に押しつけるべきではありませんし、それを引き受けるべきでもありません。本書は次のとおり述べています。

[国と国との間に国境線があるように]「対人関係においても、私たち一人ひとりは他人との間に“境界線”を持っており、どんなに親しい関係においてもそれはあります。境界線から向こう側は、私たちとは違う人がいるのであり、私たちとは違う価値観やルールがあり、違う「別の文化」があると考えるべきです。
この対人関係の境界線の存在をしっかりと理解し、境界線から向こう側に住んでいる「別の人」が大切にしている「別の文化」をしっかり尊重していくことは、安定した対人関係を続けていくうえで必須となります(p161-162)

私たちは自分の側の問題は自分で責任を持ち、自分で治していかなくてはなりませんが、相手の側の問題まで引き受けてもいけない(p162)

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(書評記事)『困った性格の人とのつき合いかた』(2)

(書評記事)『困った性格の人とのつき合いかた』(1)の続きです。

「第2章 困った性格のタイプ分け」では、パーソナリティ障害について、分類や本質的な問題、随伴する特徴などを解説しています。いくつもあるパーソナリティ障害のうち、「境界性パーソナリティ障害」と「自己愛性パーソナリティ障害」、そして「ヒステリー性格」(精神医学で言う「ヒステリー性格」(詳細はp100-)です。一般用語、日常会話の「ヒステリー」とは異なります)の3つを、日常生活を送る中でよく出会う「困った性格の人」として本書で取り上げるとしています。57ページの図表に、なぜその3つを取り上げるのか、説明が書いてあります。

なお、いわゆる「困った性格の人」に大変な思いをさせられた経験が当ブログ管理人には何回かありますが、振り返ってみると、彼ら/彼女らは上の3つのタイプのどれかにドンピシャというわけでもなかったな、と感じます。58ページの図表には「特定不能のパーソナリティ障害」(「その人のパーソナリティの様式がパーソナリティ障害の全般的基準を満たしており、いくつかの異なったパーソナリティ障害の傾向が存在しているが、どの特定のパーソナリティ障害の基準も満たしていない」ものなど)が挙げられています。また、「パーソナリティ障害とまではいかない「より軽度な性格病理」」のような表現も本書に複数回登場します。本書が解説する、困った性格の人への対処法の原則をしっかり学び、上の3つに合致しないようなタイプの「困った性格の人」ともやっていけるようになりたいところです。

「困った性格」に関して、第1章と第2章で解説がなされます。それでは対策は?と思いますが、困った性格の人への具体的な対応法を考える前に、「第3章 困った性格の病因論:なぜ人は困った性格になってしまうのか」では、困った性格はどのようにして生まれるのか(=精神医学の言葉で言う「パーソナリティ障害」や、パーソナリティ障害とまではいかない「より軽度な性格病理」の問題はどのように生じるのか)、ということについて述べています。けっこう「身もふたもない」内容のように思えますが、科学的・精神医学的な見解を述べており、大変参考になります。

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(書評記事)『困った性格の人とのつき合いかた』(1)

人間関係・対人関係に関する、とても面白い本を先日読みました。『困った性格の人とのつき合いかた』(すばる舎、2013年)という本です。書評記事を書いて、当ブログに来ていただいた方々に紹介させていただきたいと思います。

“理不尽なほどのストレス”を感じさせられてしまう「困った性格の人」に大変な思いをさせられた経験がある、または、いま現在大変な思いをさせられているといったことが、読者の皆さまにはありますでしょうか?当ブログ管理人にはあります。

精神科医による本書は、タイトルのとおり、「困った性格の人とのつき合いかた」で悩んでいる人に対して、大きなヒントを与えてくれます。とりわけ、「困ったことに私たちの社会生活では、性格的につき合いづらいからと言って、その人から離れることができないことも多いでしょう。「困った性格の人」という側面はあっても、同じ職場の上司・同僚・部下だったり、家族・親族だったり、大切な友人や恋人でもあったりします」(p5)。本書は、そうした状況で困っている人に向けて書かれたものであるとされています。

たしかに、本書(特に、具体的な対策が書いてある第4章以降)を読んでいくと、相手の価値観等に対する「一応の理解と尊重」、「一定の理解と尊重」といった表現が複数登場するなど、「相手との関係を続けていく」という前提にたって議論をしていることが見て取れます。もし仮に、「嫌いな相手と後腐れなくスパッと縁を切るための本」があるとすれば、本書とは全く別の論調になるかもしれないな、と思います。

「第1章 あなたの隣の困った性格の人」では、困った性格のタイプとして境界性パーソナリティなど4種類を事例とともに紹介しています。また、私たちが特定の対人関係を「ストレスだ」「関わりたくない」「困った人だ」と感じるのはどのような場合か、3つのパターンを解説しています。

そのパターンのひとつとして、私たち個人が本来的には自分自身で引き受け、抱えておかなくてはならない嫌な感情を、他人に押しつけようとしてしまう性向(p41)――「自分自身の感情をコントロールするために、他人の心を使ってしまう」(p42)とも表現されています――に対する抵抗感から対人関係のストレスが生じると解説しており、「自分が顧客に怒鳴られてむしゃくしゃしている気持ちを発散させるために、後輩に八つ当たりして怒鳴りつけてみたりする」(p42)ことなどを例に挙げています。なるほどなと感じました。

この対人ストレスについて、「自分と相手の間に生じる嫌な感情について、自分側の問題と相手側の問題を現実的に冷静に切り分けて考えていくこと、自分と相手の間にある境界線を明確にしていくことで、ある程度は整理しやすくなる」(p43)と述べています。このタイプのストレスを感じたときだけでなく、このタイプのストレスを生む行動を自分がつい取ってしまいそうになったとき、自戒したいと思いました。

上のような議論を経て、本章の終盤では、性格的な問題によって「つき合いづらい」と感じられてしまう人たちには「対人関係における境界線を踏み越えて“マイ常識”“マイルール”を押しつけて他者を支配しようとしてきたり、自分の感情をコントロールするためにネガティブな感情を他者に押しつけるという形で他者の心を使ってしまう、ということが目立って多い」(p49)特徴があることを指摘しています。たしかに、いわゆる「困った性格の人」とのかかわりから大きなストレスを受ける経験を当ブログ管理人もしたことがありますが、その人たちの特徴を冷静に言語化すると、上のとおりだなと感じます。

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週150分の運動が体に良い?:運動と健康に関するウェブページ選(2)

週150分の運動が体に良い?:運動と健康に関するウェブページ選(1)の続きです。

管理人の個人的意見:自分に合った運動量を楽しもう!

週150分の運動が体に良い?:運動と健康に関するウェブページ選(1)では、中程度の有酸素運動を週150分行うことなどが推奨されていることを見ました。

当ブログ管理人は、学生時代に運動系の部に所属していましたし、社会人になった今でも運動の習慣があります。運動することは好きです。

それでも、現役バリバリの社会人が、週に150分の運動時間をコンスタントに確保することは簡単ではないと感じます。週に150分の運動とは、どうしても忙しかったり、「雨がひどくて、ウォーキングをするのは難しい」といった日もあるでしょうから、「30分の運動を週5日」くらいのイメージでしょうか。準備運動や、運動前後の着替えなども含めると、もっと時間がかかります。

ところが、30分の運動時間(プラス、準備運動や、運動前後の着替えなどにかかる時間)を捻出するためには、その分、仕事を早く切り上げたり、睡眠時間を削ったりせねばなりません。いずれの場合でも週5日です。過去記事でも見たように、睡眠時間の確保も大切ですが、そちらに影響が出てしまいかねません。家庭を持っている場合、仕事の後に運動をしようとすると、終業→帰宅→食事→入浴といった、家事など(家庭ごとに、だいたいウチはこう、のようなルーチンがあると思います)が終わるのが、全体的に遅くなってもしまいます。

そもそも、多くの人を全体としてみた場合に週150分の運動が推奨されるのであって、最適な運動量は個々人で異なるかもしれません(同様のことはアルコール睡眠時間についても言えるかもしれません)。

例えば仮に(仮にです)、多くの人を全体としてみた場合に体重60kg台のグループが最も健康的だとわかったとしても、もともとの体重が50kgの人が無理にその体重まで増やそうとすると、その人にとっては太り過ぎになってしまうかもしれません。同様に、週150分の運動は多すぎる、という人がいるかもしれません。運動量自体は大丈夫なのだが、上に書いた、仕事や睡眠、家庭とのバランスを考えると週150分の運動は多すぎる、という人もいるかもしれません(いや、きっとたくさんいると思います)。

ひとつ前のエントリーで見たとおり、「適度な運動」の「適度」がどのくらいなのか研究で判明というウェブページで、「「推奨されている運動量に達しないものの、いくらかは運動を行っていた」というグループでも、早世のリスクは運動をしないグループに比べて20%も少ない」という知見が紹介されていました。

本エントリーでは、当ブログ管理人の個人的意見として、上の知見を推しておきたいと思います。たしかに、週150分の運動ができれば良いです。それを否定するものではありません。しかし、現実的には、無理のない範囲で時間を捻出して、運動を楽しむ、というところから始めてもよいのではないでしょうか?

なお、次のように述べているページもあります。

筋肉がホルモンを出して糖尿病、がん、アルツハイマー病などのリスクを防ぐ。常識を覆す「運動」効果の解明に挑む
https://www.lifehacker.jp/2016/09/160927mugendai.html

運動が健康にいいことは承知しているのに、実際には運動しない人が多いことが問題です。「運動しなさい」と言われると、シューズやウエアを買ったり、気合を入れたり。こんなイメージでは、長続きしないのが当然です。

日常生活で必要とされる身体活動のレベルを、少しでも超えるものは全て「運動」と言えます。ある運動と別の運動の違いをうんぬんするより、運動するかしないかの違いの方がものすごく大きいのです。

週150分の運動が体に良い?:運動と健康に関するウェブページ選(1)

「運動することは体に良い」、「健康維持のためには休息(睡眠)、食事、運動」などと一般に言われます。一方、運動もやり過ぎは体に悪い、というイメージもあります。最適な運動時間や運動量は、どのくらいなのでしょうか?

健康にいい、適度な運動量ってどのくらい?
https://www.lifehacker.jp/2018/04/how-much-exercise-do-i-really-need.html

上のウェブページでは、世界保健機関、米国疾病予防センター、米国心臓協会の三機関による、有酸素運動についての見解として、以下を紹介しています。

・ウォーキングなど、中程度の運動を週150分。できれば1回30分を5回に分けるのが理想。
・ランニングなど、激しい運動を週に75分。25分を3回が理想。
・10分未満の運動は1回にカウントせず、できるだけ1週間のうちにまんべんなく分散させる(つまり、1回で90分やっても十分ではない)。

「中程度の運動を週150分。かつ、激しい運動を週に75分」なのか、どちらか片方だけで良いのか、どちらでしょうか。上記のウェブページには「近所を散策するのが好きなら、1つ目の方法がよさそうです。ハードなトレーニングが好きで、スポーツウェアの洗濯が億劫なら2つ目の方法がいいでしょう」とありますので、後者(どちらか片方)のように思えます。上の3機関の見解は、以下の各ページを指していると思われますが、原文にはやはりそのように書いています。原文は、上に加えて、筋力トレーニングを週2回以上行うべき、座っている時間を短くすべきとも述べています。

「体格のよい欧米人なら週150分かもしれないが、比較的小柄な日本人はそうでないのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、性別や人種にかかわりなく、18歳から64歳のすべての健康な人に上記は当てはまる旨が、以下のWHOのウェブページには書いてあります。

また、3機関の以下のウェブページには、心臓病や脳卒中、2型糖尿病、がんなどの予防、不安感や抑うつ感の低減、睡眠や認知機能の改善などを運動の効果として挙げています。効果をさらに上げるためには、中程度の有酸素運動を週300分、または、激しい有酸素運動を週に150分にまで増やすべきだとも述べています。

Physical Activity and Adults
Recommended levels of physical activity for adults aged 18 – 64 years
https://www.who.int/dietphysicalactivity/factsheet_adults/en/

Physical Activity Basics
Recommend on FacebookTweetShare
How much physical activity do you need?
https://www.cdc.gov/physicalactivity/basics/index.htm?CDC_AA_refVal=https%3A%2F%2Fwww.cdc.gov%2Fcancer%2Fdcpc%2Fprevention%2Fpolicies_practices%2Fphysical_activity%2Fguidelines.htm

American Heart Association Recommendations for Physical Activity in Adults and Kids
https://www.heart.org/en/healthy-living/fitness/fitness-basics/aha-recs-for-physical-activity-in-adults

運動をすれば幸福度が上がる、ピークは毎日22分以上の運動量:研究結果
https://www.lifehacker.jp/2018/05/16706922minutes-mylohas.html

週に150分の運動」は、上のウェブページでもポイントになっています。上のウェブページは、ミシガン大学の研究者たちの報告を紹介しています。それによると、運動と幸福感との間には関連があり、10分の運動でも幸福感がアップする。満足度のピークは150分である、とのことです。

「適度な運動」の「適度」がどのくらいなのか研究で判明
https://gigazine.net/news/20150429-right-dose-of-exercise/

上のウェブページも、「週に150分の運動」に関して、アメリカ国立がん研究所とハーバード大学の研究チームによる、中年を中心とする66万1000人のデータをもとにした研究結果を紹介しています。例えば以下のとおり上のウェブページは述べています。

最も早世のリスクが高かったのは「全く運動しない」というグループ。しかし、意外なことに「推奨されている運動量に達しないものの、いくらかは運動を行っていた」というグループでも、早世のリスクは運動をしないグループに比べて20%も少ないことが判明しました。そして週に150分という、推奨量ちょうどの運動を行っていたグループは、全く運動していなグループに比べて死亡のリスクが31%も低かったとのこと。

上のウェブページでは、上記の研究や、20万人のオーストラリア人の健康調査データを調べた別の研究からは、「激しい運動が死亡率を上げる」という結果は出なかった、という点も紹介しています。
一方、以下のウェブページによると、運動のし過ぎには注意した方が良いかもしれません。

やり過ぎ厳禁! 適度な運動量ってどれくらい?
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/091500068/091600002/

上のウェブページは、約110万人の女性について日々の運動量と健康状況を9年間調べたところ、あるレベルまでは運動量が多くなるほど心臓病や脳血管疾患のリスクが低くなっていったが、ウォーキングやサイクリングなどの運動を「毎日欠かさず行う人」は、逆にリスクが高くなってしまったことを紹介しています。ケガの発生率や医療機関の受診日数が高まる具体的な数字として、「月200km以上走る人」を挙げてもいます。

長くなったので次のエントリーに続きます。

飲酒は体に悪いかもしれない:アルコールと健康に関するウェブページ選

一般に、大量の飲酒は体に悪い一方、「酒は百薬の長」とも言われ、適量なら健康に良いイメージがあります。

ところが、最近の医学研究の成果によると、一般に考えられているよりもアルコールの適量はずっと少ない可能性があるかもしれません。

ほどほどでも飲酒を続けると脳には有害?
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/10/post-8737.php

適量なら飲酒は健康にいい――という常識を覆して、少量でも長期に渡って飲酒を続けると脳がダメージを受けるという酒好きにはショッキングな研究結果

上の記事は、「週当たり14~21単位のアルコールを摂取していた人は、記憶や空間認知をつかさどる脳の部位である海馬が萎縮する確率が、飲まない人の3倍も高かった」という、2017年6月にブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(BMJ)で発表されたオックスフォード大学とロンドン大学ユニバーシティーカレッジ(UCL)の研究を紹介しています。「イギリス政府の定めたガイドラインでは、飲酒は週に14単位以内にすべきとされている」ことも紹介しています。

上の記事によると、1単位は「度数4%のビールなら250ミリリットル、13%のワインなら76ミリリットルに相当する」とのことです。当ブログ管理人はビールをたまに飲みますが、日本でコンビニなどで買えるビールには、アルコール度数が5.5%とか、6%のものが多いように思えます。アルコール度数が6%のビールなら、上の計算で行くと、1単位は約167ミリリットルです。

上の記事を読むかぎり、「飲酒は週に14単位以内」がポイントであるように思われます。アルコール度数が6%のビールなら、1週間に約2.3リットル以内=1日に約333ミリリットル以内という計算になります。毎日350ミリリットル缶1本だと少しオーバーする、ということになります。

1日にお酒1杯でも寿命縮めるリスク 英研究
https://www.bbc.com/japanese/43751566

上の記事も同様のことを紹介しています。上の記事は、「最新の大規模研究」の結果、「科学者たちは死亡リスクを上昇させない安全上限が、1週間あたりアルコール飲料約12.5ユニットだと発見した。これはビール約5パイント、あるいは平均以上のアルコール度数を持つワインを175ミリリットルのグラスで5杯分に相当する」ことを紹介しています。1パイントが何リットルかは、英国と米国で異なります。上の記事のタイトルに「英研究」とありますので、英国の数字を採用すると、1パイントは0.568リットルです。すると、死亡リスクを上昇させない上限は、1週間あたりビール2.84リットル=1日あたりビール約406ミリリットルということになります(ちなみに、もし、米国の数字(1パイント=0.473リットル)を採用すると、上限は1日あたりビール約338ミリリットルになります)。ひょっとすると、上記「ほどほどでも飲酒を続けると脳には有害?」のように、ビールと言っても、日本でコンビニなどで買えるビール(度数6%とします)よりもアルコール度数が低いものが想定されているかもしれません。もしそうだとすると、度数6%のビールを飲む場合、上限はもっと低くなります。

上のほかにも、複数のウェブページが、同様の研究結果を紹介するなどしています。

「適量のお酒」ですら脳の認知機能の低下を早めるとする調査結果
https://gigazine.net/news/20170613-moderate-drinking-cause-brain-decline/

→上記「ほどほどでも飲酒を続けると脳には有害?」と同じ研究を紹介しています。

1週間に7杯を超える飲酒が寿命を縮めるという研究結果
https://www.mylohas.net/2018/06/169184drinking.html

→内容から判断して、上記「1日にお酒1杯でも寿命縮めるリスク 英研究」と同じ研究を紹介しています。

「お酒を飲むことは総合的に見て健康に悪い」という研究報告
https://gigazine.net/news/20180824-alcohol-lead-disease-worldwide/

BMJ誌から 「適度な飲酒は健康に良い」は統計のマジック 様々なバイアスを考慮した解析では、飲酒で健康になれる人はわずか
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/bmj/201503/540993.html

上の各ウェブページのほかにも、精神科医の先生が運営している「Dr 林のこころと脳の相談室」というウェブサイト(http://kokoro.squares.net/)では、「酒は百薬の長」という諺には後半があり、「酒は百薬の長、されど万病のもと」ということを紹介しています(※)。アルコールは、医学的には、麻薬や覚醒剤と同じドラッグの一種であり、世界の歴史を見れば、ドラッグの合法・非合法の区別はまったくまちまちである、現代の日本でたまたま合法化されているにすぎないと指摘もしています(※※)。
(※)アルコール依存症>書斎 http://kokoro.squares.net/alstd1.html
(※※)アルコール依存症 http://kokoro.squares.net/al0.html

本エントリーで紹介した各ウェブページは、主に、長期にわたる飲酒について述べているのであって、アルコールを1日たりとも絶対に飲んではならないとは言っていません。当ブログ管理人は、この記事を書くために、日本のビールメーカーのウェブサイトを参照していましたが、そうしているうちにビールが飲みたくなってしまいました(笑)
ともあれ、アルコールは、一般にイメージされているよりも少ない量で健康に悪影響を及ぼすようだ、と意識しておこうと思います。

あなたはもっと寝た方が良いかもしれない:睡眠時間に関するウェブページ選(3)

あなたはもっと寝た方が良いかもしれない:睡眠時間に関するウェブページ選(2)の続きです。前回まで、自分に必要な睡眠時間(7~9時間または6~8時間)の確保が健康維持のためにとても重要であることや、短時間睡眠でも大丈夫なショートスリーパーはほとんどいないことなどを見てきました。本エントリーでは、睡眠時間に関連する、興味深いウェブページをさらに紹介します。

何があっても毎日絶対8時間睡眠を2ヶ月間続けてわかった4つのこと
https://www.tettyagi.com/entry/2018/02/28/175443

7~9時間の睡眠を推奨する意見や、睡眠不足の危険性などを前回のエントリーまで見てきました。ところが、忙しく働くビジネスパーソンなどにとって、睡眠時間をそれだけ確保するのは簡単でない場合もありそうです。

上の記事では、「何があっても8時間眠ると決めたら絶対に8時間」眠り、「体を張って実際に8時間睡眠を2ヶ月間ぐらい」やってみた結果をレポートしています。面白い記事なので、詳細はリンク先を参照してください。

睡眠時間を確保するためには、日中の活動を効率化したり、見直すなどして時間をつくることのほかに、寝つきを良くする工夫もしたいところです。以下のウェブページが役に立つかもしれません。

第二次世界大戦中に米海軍が開発した「2分以内に眠りにつく方法」とは?
https://gigazine.net/news/20180326-sleeping-in-2-minutes/

上のページでは、第二次世界大戦中にアメリカ海軍によって研究・開発された、「肉体的にリラックスする方法」と「精神的にリラックスする方法」が紹介されています。

かぶって寝るだけ。音と光を遮断する快眠ドーム「IGLOO」
https://www.lifehacker.jp/2018/01/180107_amazon-igloo.html

「吸音と遮光に優れた素材を使い、快適な睡眠をサポートする快眠グッズ」。「音と光をさえぎることで、快適な睡眠をサポート」してくれるとのことです。たしかに、一般的なアイマスクにはない防音性がありそうです。

「私の人生は睡眠不足だったが、良い人生だった」ということはありえそうです。人は眠るためだけに生きているわけではないかもしれません。しかし、ほとんどの人にとって健康は重要で、本エントリーまでの3つの投稿の中で紹介したウェブページによれば、健康のためには睡眠の確保は重要です。工夫や努力で、睡眠時間を確保していきたいものです。

あなたはもっと寝た方が良いかもしれない:睡眠時間に関するウェブページ選(2)

あなたはもっと寝た方が良いかもしれない:睡眠時間に関するウェブページ選(1)の続きです。前回のエントリーでは、1日に7~9時間の睡眠時間が必要だとする説などを紹介しました。それに対して、自分はショートスリーパーだから大丈夫、と思う人もいるかもしれません。ところが話はそう甘くないようです。

自分に必要な睡眠時間は実際のところどのくらいなのか?
http://gigazine.net/news/20170418-sleep-you-need/

「ショートスリーパー」という言葉を聞いたことがある人もいるかもしれませんが、実際のところ、彼らの数は人口の1%に過ぎません。

自分はショートスリーパーだから7~9時間も寝なくて大丈夫、と思う人もいるかもしれませんが、上の記事によると違います。1日2~3時間だけ眠れば十分というショートスリーパーは全人口のうちわずかであると解説しています。

上の記事を読んで、当ブログ管理人は、1日6時間だけ眠れば十分、くらいの「ショートスリーパー」ならもう少し大きな割合でいるかも?という感想を持ちました。実際、次のような記事もあります。

「早寝早起き」に囚われるな。「国民総寝不足」の日本人が知るべき睡眠研究からわかった事実
https://www.lifehacker.jp/2018/09/sleep-iiis-10th.html

多くの研究者が同意しているのは、大多数の成人にとって必要な睡眠量は6時間から8時間ぐらいだということです。

上の記事によれば、1日の睡眠時間を6時間確保していれば大丈夫な可能性があります。一方、それを下回ると危ないようです。上の記事では、1日の睡眠時間が6時間よりも少なくて十分な人はほとんどいないと、次のように解説しています。前述の「自分に必要な睡眠時間は実際のところどのくらいなのか?」と似ています。

6時間以下で充分な人は、ほとんどいないと言っていいでしょう。ゼロではありませんが、100人に1人いるかどうかの割合です。

ほかにも、寝不足が慢性的に蓄積した状態の目印のひとつとして「「早く起きて活動する平日」と「早く起きなくてもよい休日」の睡眠時間の差が2時間を超えたら危ない」という指摘など、上の記事は示唆に富んでいます。

以上紹介したウェブページの主張を総合すると、具体的な数字は研究者によって異なりますが、次のように言えそうです。ひょっとすると、多くの人の実情やイメージよりも多くの時間を睡眠にあてる必要があるかもしれません。

  • 自分に必要な睡眠時間(以上のウェブページによれば、7~9時間または6~8時間)を確保することが、健康維持のためにとても重要。
  • 短時間睡眠でも大丈夫なショートスリーパーは、実はほとんどいない。

長くなったので次のエントリーに続きます。