(書評記事)『困った性格の人とのつき合いかた』(4)の続きです。
ところで、繰り返し述べてきたように(そもそも、書評記事にして本書を紹介していることからも分かるように)、人間関係・対人関係に悩む人にとって、本書はとても参考になると個人的に思います。でも、相手は「困った性格の人」です。強烈な人、とても手ごわい人とも言えるかもしれません。本書が紹介している対処法を使ったとして、困った性格の人との関係や問題が、ある程度は改善するとしても、すぐに全面的に解決するでしょうか?
残念ながら、答えはNoのようです。本書は次のとおり述べています。
どれだけ私たちの側の対応法が完璧でも、困った性格の人たちとの関係で問題が完全になくなることはあり得ない(p216)
困った性格の人は、自分自身でその問題を自覚し、自分自身で治していかないことには、困った性格のままであり続けるでしょうし、そうあり続ける限り、対人関係で問題を生じなくなることはない(p216)
また、ひょっとしたら、いわゆる困った性格の人、あるいは、その表現では足りないほど相手に迷惑を与える人のなかには、反社会性パーソナリティ障害の人が含まれているかもしれません。本書によると、「あまりに他者に対する共感性・愛情が乏しく、平気で他人を搾取し、傷つけることを繰り返し、実際に犯罪者であることが多い(*)」(p57)人であり、「人の心を持ち合わせていないところがあり、どんな治療をしても治ることがないという点で他のパーソナリティ障害とは違いすぎる」(p57)ため、そもそも本書の対象外とされています。このタイプの人が問題を起こした場合、個人レベルで対応するのではなく、司法に委ねるべきケースが多い、ということになるのかもしれません。
(*)念のため付け加えておくと、反社会性パーソナリティ障害の人は、犯罪者であることが多く、治ることがないと本書は述べているのであって、その逆ではありません。すなわち、犯罪者は全員反社会性パーソナリティ障害であり、犯罪者は全員更生の余地がないとは本書は述べていません。なお個人的には、反社会性パーソナリティ障害じたいは治らないとしても、「反社会性パーソナリティ障害の人が、損得勘定に基づいて(悪いことをすると、刑罰やその他のペナルティを受けるなどして結局は損であることに気づいて)犯罪や犯罪まがいの行為をしなくなる」ということがあるかどうかに関心があります。
当ブログで紹介したのはエッセンスであり、興味のある方にはぜひ本書を手に取っていただければと思います。人間関係や人間の心理を言い当てている、鋭いフレーズもたくさんあります。
本書を折に触れて読み返し、また、本書が紹介している対処法を何度も練習することによって、人間関係・対人関係の悩みを減らしていきたいと思います。